111回薬剤師国家試験の薬剤領域の出題傾向と112回に向けての対策

111回薬剤師国家試験の薬剤は、図やグラフを読み取ったうえで正誤を判断する問題が12問(必須4:問41、48、53、54、理論6:問170、178、180、181、183、184、実践2:問281、284)と多く出題された。

範囲としては相互作用とDDSの出題が特に多かった。ファーマコキネティクスの純粋な計算問題は3問であったが、計算結果をもとに正誤を判断する問題や公式の理解が必要な問題を含めると7問出題されている。

薬剤は薬物動態学・物理薬剤学・製剤学の3つに分類され、それぞれについて出題傾向と112回に向けての対策をお伝えする。

◎111回国家試験の薬剤の出題傾向

薬物動態学

問題数は必須8、理論8、実践5の計20問。吸収・分布・代謝・排泄(ADME)は今年もバランス良く出題されている。

純粋な計算問題は3問。

  • 問46 繰り返し静脈内投与時の血中濃度(線形1-コンパートメントモデル)
  • 問174 負荷投与と定速静脈内投与の併用による濃度維持(点滴速度の計算)
  • 問176 ミカエリス・メンテン式に従う薬物の投与設計(平均血中濃度の目標に対する投与量・投与回数の選択)

コンパートメントモデルの計算は問46、174の2問のみで、問176は非線形の消失を扱う計算問題であった。

一方で、計算結果をもとに正誤を判断する文章問題が増加している(問173、177)。また、問175、273は計算そのものではないが、コンパートメントモデルの基礎知識(公式など)がないと解けない問題であった。これらを含めると、計算や公式・パラメータの理解が必要な問題は7問出題されている。

特記としては相互作用の出題数が非常に多かったことである。

薬剤の領域では4問出題されていた。

  • 問172 代謝過程の相互作用(CYP阻害・誘導による血中濃度変動の組合せ)
  • 問267 吸収過程の相互作用(イトラコナゾール追加時の消化管P-gp・CYP3Aなど)
  • 問270 代謝過程の相互作用(メロペネム併用によるバルプロ酸の血中濃度低下)
  • 問272 腎排泄過程の相互作用(高用量MTX療法でプロベネシドからアロプリノールへ変更した理由)

また、薬剤領域以外でも6問出題されていた。

  • 問200 薬力学的相互作用(アデノシンの作用に影響を与える薬物)
  • 問207 吸収過程の相互作用(レボフロキサシンのキレート形成)
  • 問221 代謝過程の相互作用(CYP2D6の競合阻害)
  • 問239 吸収過程の相互作用(リセドロン酸のキレート形成)
  • 問248 吸収過程の相互作用(レボドパと鉄のキレート形成)
  • 問307 代謝過程の相互作用(グレープフルーツジュースによる代謝阻害)

合計で相互作用は10問出題されている。

相互作用の内訳は吸収過程の相互作用が4問、代謝過程が3問、排泄過程が2問、薬力学的相互作用が1問であった。110回の7問からさらに増加しているが、ほとんどが過去問題で既出の組み合わせであり、押さえておけば大半は得点できる内容であった。

実践問題では、消化管トランスポーター(問267)、代謝過程の相互作用(バルプロ酸、問270)、腎尿細管分泌(MTX、問272)のように、相互作用が特定の症例で前面に出ており、いずれも機序の理解に加えて、処方変更・モニタリング・支持療法などの相互作用回避のための対応策まで押さえていないと解きづらい構成であった。

また、薬剤以外の領域でも、アセトアミノフェンの代謝経路と解毒薬(問234・235)、イオパミドールの体内動態(問332)、遺伝的多型(問342)など、薬物動態学の知識を前提とした問題が見られた。

物理薬剤学

問題数は必須2、理論4、実践0の計7問。

図やグラフの問題が4問と非常に多かった。

  • 問48 粉末X線回折パターン(結晶多形と非晶質の識別)
  • 問178 結晶と非晶質固体分散体の溶解挙動(過飽和から析出までの濃度—時間曲線)
  • 問180 界面活性剤濃度と表面張力・難溶性薬物の可溶化量のグラフ(臨界ミセル濃度、吸着の範囲)
  • 問181 懸濁粒子の積算粒度分布と沈降(Stokes式、時間変化のグラフ選択)

理論問題は、過去問題のベースの知識を持ち合わせた上で、問題文やグラフから状況を判断し解答する必要がある問題が多く出題されたため、解きづらいと感じた方が多いと推測される。特に問181は、粒度分布の図から粒子径を読み取り、Stokes式で沈降を考え、さらに時間変化のグラフを選ぶという多段の形式で、情報量の多い問題であった。

製剤学

問題数は必須5、理論3、実践5の計13問。

特に出題が多かったのがDDS(ドラッグデリバリーシステム)の範囲で、薬剤の領域では6問出題されていた。

  • 問54 スパスタブ型製剤の構造(速溶性顆粒と徐放性顆粒の複合設計を図から識別)
  • 問55 受動的ターゲティング(PEG修飾リポソーム)
  • 問184 水不溶性コーティング膜を介した拡散による放出制御(膜厚・放出面積との関係)
  • 問279 ADC(抗体薬物複合体)の特徴(能動的ターゲティング、細胞内移行と薬物の遊離)
  • 問281 アルプロスタジル注射剤の製剤学的な特徴(脂肪乳剤)
  • 問283 経口セマグルチドのSNAC添加による吸収改善

また、薬剤以外の領域でも2問出題されていた。

  • 問209 腸溶性製剤の服薬指導(プロトンポンプ阻害薬)
  • 問326 ドキシル注(PEG修飾リポソーム製剤)の特徴

合計でDDSは8問出題されている。

DDSの内訳は吸収改善型DDSが1問、コントロールドリリース型DDSが3問、ターゲティング型DDSが4問であった。110回の11問からは減少したものの、引き続き出題の中心であり、ほとんどが過去問題の既出内容で、押さえておけば大半は得点できる。

問54のように製剤の構造を図で問う問題も出題されており、体内動態の特徴だけでなく構造まで把握しておく必要がある。

その他は製剤総則が2問(問52、182)、添加物が2問(問219、276)、半固形製剤が2問(問302、303)、試験法が2問(問53、284)、製剤機械が1問(問183)と出題されていた。また、組成・性状を読み取ったうえで正誤を判断する問題(問182、276、283、284)も出題されている。さらに、問276・277のように、院内製剤の製剤学的な特徴(薬剤)と交付時の説明(実務)を同じ症例でセットで問う連問も出題された。全体として過去問題ベースではあるが、過去問題で出てきた具体的な製剤の特徴まで整理していないと解きづらい問題が見られた。

◎112回国家試験に向けての対策

全ての範囲でまずは過去問題(少なくとも直近5年)をしっかり解けるように勉強を進めていくことが重要であるが、より範囲ごとに掘り下げて説明をしていく。

薬物動態学

ADMEをしっかりと押さえることが何よりも重要である。その際に薬物の体内動態を【イメージ】しながら勉強を進めていくことを意識する。相互作用は頻出の内容が決まっているため、参考書に載っている組み合わせは必ず押さえる事が重要。さらに、相互作用が起きる組み合わせだけでなく、防止のための薬剤変更(変更理由も含め)や処置方法まで整理しておくと、111回の問270(バルプロ酸とメロペネム)や問272(MTXとプロベネシド)のように、症例の中で機序と対応をセットで問う問題でも得点につながる。TDMも実務で出題されるため、あわせて押さえておきたい。

ファーマコキネティクスの純粋な計算問題は3問(問46、174、176)であったが、計算結果をもとに正誤を判断する問題や公式の理解が必要な問題を含めると7問出題されており、計算系の範囲の学習は引き続き必要である。ベースとなる動態パラメーター(CL、Vd、t1/2、AUCなどの関係)や投与計画(点滴、繰り返し投与、非線形の消失)は、自分で計算し、その結果から何が言えるかまで説明できるように勉強を進めていくべきである。

物理薬剤学

必須問題の取りこぼしが無いよう、全体を満遍なく既出内容を勉強する事がまず重要である。理論問題はそのベースの知識をもとにグラフや問題文より解答を導く形式であるため、過去問題で解けるようになった次のステップとして、過去問題で出てくる言葉の意味を自分のなかで落とし込めているか、イメージを持ちながら過去問題を解けているか意識する。

例えば、臨界ミセル濃度の前後で表面張力や可溶化量のグラフがどう変化するのか、その理由まで説明できるようにしておくと、111回の問180のような問題にも対応できる。

製剤学

全体を満遍なく既出内容を勉強する事が重要であるのは物理薬剤学同様である。製剤学は【具体的な医薬品】が出題されるため、過去問題で出てきた具体的な医薬品の特徴をしっかりと押さえていく事が重要である(この医薬品はPEG修飾リポソーム製剤である、この医薬品はADCである、等)。そしてその医薬品が製剤化を施す理由まで意識して勉強すると定着率が高まる。

DDSについては、体内動態の特徴に加えて構造まで把握しておく必要がある(110回、111回ともに出題)。さらに一歩進めると、各種製剤には共通の特徴がある事も多いため、横断的に特徴を繋げながら押さえていく事が大切である(例えば点眼剤と注射剤、腹膜透析用剤は無菌製剤であるが、点眼剤のみエンドトキシン試験法への適合は求められていない、等。下記の特記問題で活用できる)。

また、試験法はよく出題されるため、生物学的同等性試験やバイオシミラーまで派生して整理しておくとよい。

◎111回の特記問題の紹介

薬物動態学

問173 体重60kgの患者にアミノグリコシド系抗菌薬ゲンタマイシンを静脈内投与したところ、以下の薬物動態パラメータが得られた。

(薬物動態パラメータ)

全身クリアランス(CLtot)75.0mL/min、糸球体ろ過速度(GFR)62.5mL/min、尿中未変化体排泄率(fe)0.92、血漿タンパク非結合率(fp)0.90

その後、急性腎障害を発症したため、CLtotが40.0mL/minに、GFRが27.8mL/minに、feが0.85に低下した。本患者におけるゲンタマイシンのクリアランスに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、急性腎障害の前後でfpは変化しないものとする。

1 腎障害前のゲンタマイシンの糸球体ろ過クリアランスは62.5mL/minである。

2 腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンの腎排泄には尿細管分泌が関与する。

3 腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンは尿細管から再吸収されやすい。

4 ゲンタマイシンの腎クリアランスは腎障害によって変化しない。

5 ゲンタマイシンの腎外クリアランスは腎障害の前後でほぼ一定である。

正解:2、5

簡易解説:腎障害の前後での各種クリアランスを算出する。

  • 糸球体ろ過クリアランス=GFR×fpより、腎障害前:62.5mL/min×0.9=56.25mL/min、腎障害後:27.8mL/min×0.9=25.02mL/min
  • 腎クリアランス=CLtot×feより、腎障害前:75.0mL/min×0.92=69mL/min、腎障害後:40.0mL/min×0.85=34mL/min
  • 腎外クリアランス=CLtot-腎クリアランスより、腎障害前:75.0mL/min-69mL/min=6mL/min、腎障害後:40.0mL/min-34mL/min=6mL/min

よって、腎障害前の糸球体ろ過クリアランスは56.25mL/minであり、62.5mL/minではない。腎クリアランスは腎障害前で69mL/min、腎障害後で34mL/minと低下している一方で、腎外クリアランスは前後とも6mL/minであり、ほぼ一定である。

尿細管分泌の有無は、糸球体ろ過クリアランスと腎クリアランスの大小関係(クリアランス比)で判別できる。腎障害の前後ともに、糸球体ろ過クリアランスよりも腎クリアランスのほうが大きな値となっているため、腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンの腎排泄には尿細管分泌が関与すると判断できる。ただし、尿細管分泌が関与する事は判断できるが、尿細管で再吸収されやすいとは判断できない。

物理薬剤学

問180 下図は、ある界面活性剤水溶液の濃度と表面張力及び難溶性薬物の可溶化量との関係を模式的に示したものである。この図に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 この界面活性剤は、負吸着を示す。

2 Aは可溶化量を、Bは表面張力を示している。

3 濃度Xでは、界面活性剤は全てミセルとして存在している。

4 濃度Xよりも高い濃度では、溶液表面への界面活性剤の吸着量が一定となる。

5 濃度Yでは、疎水基を外側に、親水基を内側としたミセルが形成される。

正解:2、4

簡易解説:濃度Xは臨界ミセル濃度(cmc)である。可溶化量は、難溶性物質が界面活性剤のミセル内に取り込まれることにより可溶化した量である。cmc(点X)以前の濃度ではミセルを形成しないためほぼ0である。一方、cmc以降の濃度では界面活性剤濃度の増加によりミセル数が増加するため、可溶化量が大きくなる。

表面張力は、界面活性剤濃度の増加により表面への吸着量が増加するため低下するが、cmc以降の濃度では表面が飽和するため、界面活性剤が増加しても表面張力はほとんど変化しない。よって、Aが可溶化量、Bが表面張力であると判断できる。

また、cmc以降の濃度では表面に存在する界面活性剤が飽和しており、溶液表面への界面活性剤の吸着量はほぼ一定となる。なお、界面活性剤は界面に正吸着することで表面張力を低下させる。cmcはミセルを形成し始める濃度であり、cmc以降は界面活性剤の添加とともにミセルが増加していく(cmc以降もモノマーは一定量存在する)。また、水中で形成されるミセルは、内側に疎水基、外側に親水基を向けた集合体である。

製剤学

問276-277 7歳児男。近視の薬物治療を希望する母親に連れられて来院した。当院では、6歳から18歳未満の中等度近視の小児に対して、低濃度アトロピン硫酸塩点眼薬(院内製剤)を使用した近視進行抑制治療を実施している。

診察の結果、中等度近視と診断され、患児及び母親にインフォームド・コンセントを行い、以下の院内製剤が処方された。

(処方)アトロピン点眼薬0.01%(院内製剤)5mL 1本

1回1滴 1日1回 就寝前 両眼に点眼

なお、本院内製剤は、医療用医薬品である1%アトロピン硫酸塩点眼液(注)0.5mLを、注射用生理食塩液49.5mLで希釈し、点眼用プラスチック容器に5mLずつ分注して調製する。

注:アトロピン硫酸塩水和物点眼液1%

・有効成分:(1mL中)日局アトロピン硫酸塩水和物10mg

〈性状〉水に極めて溶けやすく、エタノール(95)に溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。光によって変化する。

・添加物:亜硫酸水素ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物、等張化剤、リン酸二水素ナトリウム水和物、無水リン酸一水素ナトリウム

・pH:5.0~6.5

問276 本院内製剤及びその調製法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 非水性点眼剤である。

2 無菌的に調製する必要がある。

3 調製した製剤の浸透圧は、約600mOsmとなる。

4 日本薬局方「エンドトキシン試験法」への適合を確認する必要はない。

5 涙液中のナトリウムイオンによってゲル化することで効果が持続する。

正解:2、4

簡易解説:本院内製剤は、1%アトロピン硫酸塩点眼液0.5mL(アトロピン硫酸塩水和物5mg)を注射用生理食塩液で全量50mLに希釈しているため、5mg/50mL=0.1mg/mL=0.01%となる。生理食塩液で希釈しており、水性点眼剤である。

点眼剤は無菌性が要求される製剤であり、院内で希釈・分注する場合も無菌的な調製が必要である。また、無菌の点眼薬も生理食塩液もほぼ等張であるため、希釈後の浸透圧は約300mOsm/L程度であり、約600mOsmとはならない。

点眼剤の試験法は無菌試験法、点眼剤の不溶性微粒子試験法であり、日本薬局方「エンドトキシン試験法」への適合を確認する必要はない(エンドトキシン試験法は注射剤や透析用剤が適合する必要がある)。

なお、涙液中のナトリウムイオンによってゲル化する添加物としてはジェランガムがあるが、本点眼剤の添加物には該当する添加物は配合されていない。

紹介した上記3問は、過去問題の一歩先まで整理をしていないと解きづらい問題の代表例である。このレベルの問題が本番でしっかり対応できれば、薬剤学に関しては平均点以上を確実に取れる。今回の記事を参考に112回国家試験合格に向けて勉強を進めてもらえれば幸いです。

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